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三 部 正博の“風景×遺影”——人工と自然の境目で何が起きている
三 部 正博の“風景×遺影”——人工と自然の境目で何が起きている
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三 部 正博の“風景×遺影”——人工と自然の境目で何が起きている

Author

Mason Cooper

Published Sep 01, 2026

「三 部 正博」という名前を見かけたとき、たいていの人はまず“作家名”として受け取る。でも作品を見ると、その理解はすぐ揺らぐ。風景写真のはずなのに、どこかで遺影の記憶が重なる。人工の部材が自然の奥行きに割り込む。東京生まれの作家は、見せ方を通じて、私たちの感情の境界を試してくる。

三 部 正博(Masahiro Sambe)は、人工部材と自然風景を意図的に重ね合わせ、風景写真と遺影を組み合わせた表現で記憶や感情の揺らぎを生む作家。2006年に独立後、アート・建築・音楽・ファッション等の受注と並行して制作し、2025年9月の京都個展「PORTRAIT IN LANDSCAPE」で新作を予定。

項目 要点
作家名 三 部 正博(Masahiro Sambe)
出生 1983年、東京
学歴 東京視覚芸術大学卒業
独立 2006年(アキオ・トマリの下で学ぶ)
制作の軸 人工物×自然、風景写真×遺影、「landscape」シリーズ
主要展覧会 2006年「and people」(Gallery WALL)/2023年「Glass Tableware in Still Life」(広島市近代美術館 などのグループ展)
個展予定 2025/9/12〜9/23 京都・SAN ROOM KYOTO「PORTRAIT IN LANDSCAPE」
公式 http://3be.in/(Vimeoはパスワード要、Instagramは非公開)

“三 部 正博”という名前の手触り——作品が観る側の記憶を動かす

三 部 正博の作品は、説明が先に立つタイプではない。むしろ、こちらの視線が作品の前で止まるところから始まる。人工物と自然の風景が、同じ画面の中で噛み合うように見える瞬間がある。だが、その噛み合いは“自然な一致”ではない。わずかに不揃いで、だからこそ気持ちが揺れる。

この揺れは、作家の履歴にもつながっている。東京視覚芸術大学を出て、アキオ・トマリの下で学び、2006年に独立。その後もアート、建築、音楽、ファッションと、複数の領域で受注作品を手がけてきた。専門分野がひとつに閉じない姿勢が、作品の“構成の癖”として表れているように見える。

人工部材と自然風景の重ね方——2015年前後から見える方向転換

公開されている情報から追えるのは、三 部 正博が2015年頃から「人工物と自然を超える構図」を探ってきた、という流れだ。ここで重要なのは、“超える”という言葉が抽象的な理念に聞こえる点ではなく、作り方に影響している可能性が高い点だ。

人工の部材は、自然の風景に対してしばしば違和感を生む。サイズ、質感、光の反射、時間の流れ。だから普通は、自然と人工は別々のものとして扱われる。ところが三 部 正博は、違和感を消す方向ではなく、違和感が生む感情の回路を引き出す方向に寄せているように見える。

「landscape」シリーズと個人的レポートの意味——風景は“報告”でもある

三 部 正博は、個人レポートとして「landscape」シリーズを制作してきたとされる。ここでの“レポート”は、単なる制作記録というより、現場に対する観測の姿勢を含んでいる言い方に思える。風景写真は、一見すると撮影者の記憶を固定するメディアだ。しかしレポートの語感が入ることで、その固定は少し壊れ、視線が再検証を始める。

風景写真は“そこにあった”という事実の匂いを持つ。ところが人工部材が入り、さらに遺影のような記号が重なると、事実の匂いは感情の匂いに置き換わっていく。見ている私たちは、「写っているもの」を追うだけでなく、「なぜこの組み合わせなのか」を感じ取ろうとする。作家はその反応の速度を、作品内のずれで調整しているようだ。

受注の多領域経験が、作品の“構成力”を育てた可能性

三 部 正博は独立後、アート・建築・音楽・ファッションの分野で受注作品を手がけたとされる。受注は、依頼主の目的や期限、実装の条件に縛られやすい。つまり通常は、自由な制作とは距離ができる。

それでも作家が複数領域で仕事を続けてきたなら、制作の中に「条件を抱えた構成」が積み上がったはずだ。建築的な視点は画面のバランスに、音楽的な視点は反復や間(ま)の作り方に、ファッション的な視点は身体感覚に近い見え方へ。もちろん、公開情報だけで因果を断定はできない。それでも、作品が“整っているのに落ち着かない”性質を持つ点は、この経歴と相性がよい。

さらに、アキオ・トマリの下で学んだ経路も無視できない。師弟関係は様式の継承にもなるが、多くの場合は「考え方の癖」を持ち帰る。三 部 正博の作品が、自然と人工の境目を“消す”より“観察する”方向に寄っているのは、その癖の表れかもしれない。

展覧会の足跡:2006年の出発点から、2023年の複数参加へ

三 部 正博の活動を追うと、2006年に東京・Gallery WALLで「and people」を開催したことが分かる。独立とほぼ同時期に、作品を公の場に出している。ここは重要だ。独立直後に“作品の言葉”を外に向けたことは、制作がすでに単なる試行段階を超えていた可能性を示す。

その後も、2023年には広島市近代美術館で「Glass Tableware in Still Life」など、複数のグループ展に参加したとされる。ジャンルをまたぐ作家ほど、グループ展は“評価の場”であると同時に“対話の場”になる。テーブルウェアやスティルライフの文脈に接続されることは、三 部 正博が単一テーマに閉じていないことをうかがわせる。

Gallery WALL「and people」が示した初期の強さ

2006年の「and people」は、タイトルの時点で人の気配を想像させる。三 部 正博が最終的に遺影と風景を重ねる方向へ向かうなら、“人”を感じさせる造形の感度は初期から存在していたのかもしれない。

2025年・京都個展「PORTRAIT IN LANDSCAPE」——風景に“肖像”が入る

三 部 正博は、2025年9月12日から23日まで京都・SAN ROOM KYOTOで個展「PORTRAIT IN LANDSCAPE」を開催予定だ。告知情報として明確なのは、「風景写真と遺影を組み合わせた新作」を発表予定だという点である。

タイトルにある“LANDSCAPE”はシリーズの方向性を想起させる。一方、“PORTRAIT(肖像)”は通常、人を指す言葉だ。風景に肖像が入り込むことで、風景の役割が変わる。風景は背景ではなく、人物の“余韻”の器になる。遺影の導入はさらに強い意味を持つ。遺影は、生者の言葉ではなく、亡くなった人の側からこちらを見てくる記号に近い。

だからこの個展は、“新しい見せ方の実験”にとどまらない可能性がある。三 部 正博が人工と自然の境界を探ってきたなら、ここで次は「生と死の境界」を画面の中で揺さぶるのだろう。観客が感じるのは悲しみだけではないはずだ。記憶が呼び覚まされるとき、人は整理しようとする。整理できないまま、しかし先へ進む。その感覚に近いものが、作品から立ち上がってくる。

公式サイトと発信のクセ——情報の“出し方”にも作品の輪郭がある

オンライン情報として、公式サイト www.3be.in が案内されている。Instagramはプライベートアカウント、Vimeoはアクセスにパスワードが必要とされる。露出を増やすタイプの発信ではない。むしろ、見る側が“探しに行く”設計に近い。

この発信方針は、作品の性格と似ている。三 部 正博は、こちらが一度で理解できるようには作らない。最初の印象が引っかかったまま、次の情報や別の角度で意味が組み替わる。作品と情報の導線が同じリズムを持つからこそ、作家の全体像がじわじわと輪郭を取ってくる。

三 部 正博の作品を読むための観点——“不一致”を手がかりにする

三 部 正博の作品を見るとき、最初に試すべきは「どこが不自然か」を探すことだ。不自然さが見つかれば、それは誤りではなく“設計”である可能性が高い。人工物が自然の中で浮いているのか、光が噛み合っていないのか、時間の層がズレているのか。そうした手がかりは、感情の理由を引き出してくれる。

次に、遺影という要素を“説明”ではなく“位置情報”として読むこと。遺影は人物を固定する記号だが、風景の中に置かれると、固定の方向が変わる。人物が風景の側へ吸い込まれたり、風景が人物の不在を運んだりする。人工と自然だけでなく、存在の種類もまた入れ替わる。

最後に、シリーズ名「landscape」や個展タイトル「PORTRAIT IN LANDSCAPE」が示す往復運動に注目してほしい。風景は見て終わるものではなく、肖像を呼び寄せる場所になる。その逆もあり得る。三 部 正博は、観る行為を一方通行にしない。だからこそ、作品が残る。

Frequently Asked Questions

三 部 正博(Masahiro Sambe)とはどんな作家ですか?

人工部材と自然風景を重ね合わせ、風景写真と遺影を組み合わせる表現で、記憶や感情の揺らぎを誘発する作家として紹介されています。

どんな経歴を持っていますか?

1983年に東京生まれ。東京視覚芸術大学を卒業し、アキオ・トマリの下で学んだ後、2006年に独立。アート、建築、音楽、ファッションなどで受注作品を手がけながら制作しています。

主要な展覧会はありますか?

2006年に東京・Gallery WALLで「and people」。2023年には広島市近代美術館でのグループ展「Glass Tableware in Still Life」などに参加したとされています。

2025年の個展はいつ・どこで開催されますか?

2025年9月12日から23日まで、京都・SAN ROOM KYOTOで個展「PORTRAIT IN LANDSCAPE」を開催予定です。

公式サイトや活動情報はどこで確認できますか?

公式サイトは www.3be.in です。Instagramはプライベートアカウント、Vimeoはパスワードが必要とされています。

境目を見せる作家—三 部 正博が残す“次の視線”

三 部 正博の仕事は、自然と人工の境界、そして肖像と風景の境界を、観客の目の前で折り返します。答えを与えるより先に、こちらの見方を少しだけ遅らせる。それが作品の強さです。2025年の京都個展で、風景に“肖像”がどう入ってくるのか。注目はそこに集まるはずです。